「もう1年近く、ずっとひどい肩こりに悩まされていて……。何軒も整体や鍼灸院を回ったけれど、どこへ行ってもスッキリしないんです」
そう肩を落として当院へ来院されたYさん。お身体を細かくみさせていただくと、首から肩、背中にかけての筋肉がまるで板のように強烈に硬直しており、日常的に相当な負担がかかっている状態でした。
初診から2回ほど、まずは首や背骨の歪みを整え、肩周囲の深層筋を緩める通常の施術を行いました。
施術直後は「あ、少し軽くなりました」と変化を感じていただけるものの、芯にある強い緊張感がどうしても取りきれない。
どこか別の場所に、この緊張を作り出し続けている「隠れた原因」があるはずだと考えました。
そこで着目したのが、顎関節(がくかんせつ)です。
Yさんご自身は「顎が痛い」「口が開けにくい」といった顎関節症の自覚症状は一切ありませんでした。
しかし、顎の動きや側頭部、フェイスラインの筋肉を丁寧に触診していくと、噛むための筋肉である咬筋が異常なほど強く緊張していたのです。
そこで3回目の施術では、肩ではなく顎関節症に対するアプローチを中心に施術を実施しました。
顎関節のアライメントを調整し、過緊張を起こしていた咬筋を緩めたところ——。
施術後、肩を回したYさんの表情が一変しました。
「あれ……? あれだけ重かった肩が、嘘みたいに軽い!」
取りきれずに残っていた頑固なコリが、まさにバッチシ軽快したのです。
実は臨床現場において、こうしたケースは決して珍しいことではありません。
顎の働きや噛み合わせの緊張は、首の骨(頚椎)を経由して、肩や全身の筋肉バランスにダイレクトに波及します。
人間は強いストレスや集中を強いられたとき、身体の中で最も最初に緊張するのが「咬筋」だと言われています。
仕事や家事、日々のプレッシャーの中で、本人が全く気づかないうちに無意識の「食いしばり」や「噛み締め」を続けてしまっている方が非常に多いのです。
噛む筋肉が24時間体制で力み続けていれば、連動している首や肩の筋肉が緩む隙はありません。
マッサージや一般的な整体を受けてもすぐに肩こりがぶり返してしまう方、常に身体のどこかに力が入って抜けない方は、肩そのものではなく「顎」に根本原因が潜んでいるかもしれません。
長引く不調にお悩みなら、ぜひ一度、顎関節からのアプローチを試してみてください。

著者紹介 江尻俊
1997年業界入り、大阪府池田市にてエジリカイロプラクティックさかえ鍼灸院を2008年に開業。カイロプラクティック・オステオパシーを学ぶところから始め、その後鍼灸、その他の施術法を数多く学び、現在では、体・心・栄養のすべてからアプローチする独自の施術を確立し、自身が自然療法で救われた経験を原点に、お子様からご高齢の方まで、一人ひとりの不調をサポートし続けている。


